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フリーランス イラストレーター高田ゲンキの情報発信ブログ、『Genki Wi-Fi(ゲンキ・ワイファイ)』。

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続・イラストレーターになるには – 序章「イラストレーターは職人であれ!」

      2015/09/30

 - イラストレーション, イラストレーターになるには    -

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Becaraftsman 75010年ほど前、イラストレーターとして独立したばかりだった僕は、いろんな人に自分の絵(イラスト)を見てもらったものでした。独立したばかりのころは本当に絵がヘタクソだったので自信がなく、ひとりでも多くの人にアドバイスをもらおうと必死でした。その結果として、確かにそれなりに多くのダメだしを受けたのですが、意外なことに「絵がヘタ」というダメだしはほとんど無く(まあ、その点はツッコミづらいからだと思いますが)、最も多かったのは「こんな誰が描いているのか分からないような、当たり障りの無い絵ではダメだ」というモノで、特に比較的年配のクリエイター層からよく言われました。

特に印象的だったのは、ある年配のアーティストに同様のことを言われた際に「どうして当たり障りのない絵じゃダメなんでしょうか?」と聞いたところ、「だって、これはゲンキ君の内面から湧き出たモノ!って感じが全然しないよ。もっと自分自身を素直に表現しないと。こんな表面的な表現では3年もやったら飽きちゃって続かないよ」と返されたことでした。一方で、僕はむしろ自己表現ではない匿名性の高い表現をすることで、色々な媒体に使ってもらえる可能性が広げたいと思っていたので、あまりその意見には賛同できませんでした。当然その頃の僕は駆け出しだったので反論するにも根拠が無く、その場は黙って聞くしか無かったわけですが、その後10年のイラストレーターとしての経験を経て、やはり自分は間違っていなかったと確信を得られたので(というのも、その“当たり障りのない絵”で、10年以上生計を立ててきたので・笑)、今回はその根拠について書きたいと思います。

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アーティスト(芸術家)とは

Becaraftsman 1前提として重要なのは「アーティスト」と「職人」の違いで、これは一部の分野・業界では常識的なことですが、日本においては一般的には意外なほど認知されておらず、クリエイター(志望)の人でさえ、その区別や定義を説明できないことが多いのが現状ですが、クリエイターに限らず全ての人が知っておいて損の無い概念だと思います。

まず「アーティスト」を定義すると、「アート(芸術)表現をする人」となります。では、芸術とは何か?というと、これは多岐にわたっていて、かなり定義が難しいのですが、「表現者自身が抱く理想や思想を独自の方法論を使って表現して発信すること」と言えるのではないかと思います。アーティストと聞いて連想する人と言えば、たとえば岡本太郎氏が有名ですが、好き嫌いは別にして、氏の表現への姿勢はまさに「芸術家」のそれだと言えると思います。音楽の世界だと、クラシックの偉人たちが芸術家として扱われることが多いですが(厳密に言うと、これは議論の余地のある定義だと思っています)、20世紀の大衆音楽においても、例えばボブ・ディランとかジョン・レノンとか、その辺りの人の作品や生き様はアーティスト的ですし、そう考えると、我々がミュージシャンや歌手のことを「アーティスト」と称するのも自然なことだと言えると思います。

また、特に近年においては商業主義的なものに対するカウンターに芸術が置かれることが多い印象があるので、商業的な傾向が強い創作物は芸術とは認められず、逆に商業主義(あるいは時代の流行)に迎合しないストイックな創作ほど芸術性が高いとされる傾向があると思います。

職人とは

Becaraftsman 2日本では「職人」というと、伝統工芸的な文化の継承者であったり、左官等の古い建築の専門職のイメージが強い気がしますが、職人という言葉の定義自体はもっと広くて、先ほどのアーティストの定義に対比させると「自分の表現的専門スキル(職能)を活かして、他人が必要としているものを形にすることを仕事にする人全般」と言えると思います。たとえば、先ほどの例で大衆音楽の例を出しましたが、人気のポップシンガーは「アーティスト」と呼ばれますが、彼らがテレビの音楽番組などに出演してステージで歌う際には、無名だけど凄腕のいわゆる演奏者たちやコーラス隊などで編成される、いわゆる「バックバンド」が演奏を支えたりしているのを目にすることがあると思います(あと、NHKのど自慢のバックバンドとかもそうですね)。その「バックバンド」こそがまさに「職人」で、彼らは「スタジオ・ミュージシャン」とか「セッション・ミュージシャン」とも呼ばれ、アーティストたちのように強烈な個性は無いかわりに卓越した演奏(歌唱)技術を持ち、作品やパフォーマンスではなく、そのスキルを商品として仕事をしているという点で、同じステージに立っていても、アーティストとは全く違うビジネス形態を取っている種類の人たちなのです。

このような定義を知ったうえでクリエイター産業を見ると、けっこういろんな発見があると思います。たとえば、wikipediaの「画家」についてのページにおける説明で、

画家は現代においてこそ芸術家であるが、ルネサンス期やそれ以前においては、「絵を請われて描く」という基本行動からして職人であった。

wikipedia「画家」より引用

…とありますが、これも理解しやすくなると思います。

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イラストレーターは職人であれ

Becaraftsman 3もうお分かりかと思いますが、冒頭に書いた10年前の年配のアーティストのアドバイスと、それに対する僕の違和感は、この「アーティストと職人の違い」そのものなのです。そして、イラストレーターの仕事とは、他者(出版社やデザイナーやディレクターなどのクライアント)が必要としているイメージをイラストレーションとしてビジュアル化することであり、自分の理想や思想を表現することが本分ではないので、上記の定義を見ると「イラストレーター = 職人」と言えると思います。コレに関しては異論が出そうですが、厳密に定義すると、やはり全てのイラストレーターは職人であり(あるいは「職人であるべきであり」)、一見芸術家のようなイラストレーターもいるにはいますが、それは「アーティストっぽい表現方法を使った職人」と言えると思います(本人に自覚があるかどうかは別として)。

そういうわけで、イラストレーター(志望)の人は「職人であるべき」と自覚するべきだと思っているのですが、音楽業界などと違って、絵の世界はその区別がつきにくいため、業界誌などでもイラストレーターをアーティスト的に扱い、またイラストレーター志望の若い人たちもその影響などでアーティスト(っぽい)志向のイラストレーターに憧れて目指す傾向が強く見られ、その潮流は憂慮すべきものだと思っています。

憂慮すべき理由は多数ありますが、例をひとつ挙げると、そういう傾向によって、「イラストレーターは才能があって、しかも運が良いほんの一握りの人しかなれない非現実的な職業」として認識されてしまうからです。近年、10代の若者たちが将来目指す職業としてイラストレーターは人気が高いと聞きますが、一方で、先生や親など大人たちは「それはプロ野球選手を目指すようなものだから、もっと現実を見なさい」的な反応が多いようです(これは僕が子どもの頃に漫画家を目指した時の反応と同じです)。そして、それは前述の通り「イラストレーター = アーティスト」という認識によるところが大きいと言えるのです。

たしかに、イラストレーターという仕事は、すべての志望者がなれる職種ではありませんが(というより、もちろんなりたくてもなれない人の方が多いのは事実ですが、そんな職種は他にもいくらでもありますよね)、「アーティスト」になるより「職人」になることの方が遥かに間口が広く敷居は低く可能性は高いのです。なぜなら、「アート」は最終的に個人のセンスや感覚に依存するものですが、「職人」的表現に関しては感覚やセンス以前に、体系だった方法論(メソッド)があり、それを習得することで一定の技術を誰でも身につけることができるからです。しかし、残念なことに、現在日本に存在する「イラストレーター養成スクール」的な専門学校やセミナーで、こういったメソッドを教えているところは、ほぼ無いと思います。僕自身が実際に通ったわけではありませんが、カリキュラムを見たり卒業生の話を聞く限り(そして卒業生たちの描く作品を見る限り)、表面上のタッチやスタイルの開発に終始して、絵の基本的な技術や概念は学べず、その結果、卒業してもプロのイラストレーターとして通用しない人が圧倒的多数です。もちろん、イラスト学校を卒業して大活躍しているイラストレーターも多数いますが、そういう人たちは学校に行かなかったとしても活躍できた可能性が高いと言えると思います。いずれにしても、もし、どこかしらに入学を考えている人は、その学校の卒業生の何割が卒業後イラストレーターになり、更にその何割がイラストだけで生計を立てられているのかをリサーチ(というか、学校に問い合わせ)した上で検討するべきでしょう。

別に学校に行くことが特別悪いと言いたいわけでもありませんが、そういった学校はどこもそれなりに学費が高いので、そこにお金を使うくらいなら、もっと有用な自己投資があると言いたいのです(お金がいくらでもある人なら、別に良いですけど)。特に、インターネットが発達した今日においては、最先端の教材を無料でいくらでも見ることができ(英語の素材が中心ですが)、「学校に行かなくては学べない」時代は、イラストレーションという分野に限らず、もう終わりつつあると思っています(この“学校・教育論”については、また改めて書きます)。

過去に「イラストレーターになるには」という記事を書いたところ、予想を超えてアクセスがあり、イラストレーターを志す人が想像以上に多いと感じたので、そういう人たちに向けて今後更に「続・イラストレーターになるにはシリーズ」的記事を(私見たっぷりに)発信していくつもりですが(その中で前述の「メソッド」「方法論」にも触れていきます)、それに先駆けて、前提として知っておくべき「イラストレーター = 職人」という考え方の説明をしました。

今回の内容について、疑問・質問等ありましたら、コメント欄やメール等でお気軽にお問い合わせください。


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