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フリーランス イラストレーター高田ゲンキの情報発信ブログ、『Genki Wi-Fi(ゲンキ・ワイファイ)』。

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イラストレーターになるには①
「イラストレーターになりたかったら、デッサンをやるべし!」

      2015/09/30

 - イラストレーション, イラストレーターになるには    -

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Dessin前回のエントリー「続・イラストレーターになるには – 序章『イラストレーターは職人であれ!』」から間が空いてしまいましたが、「イラストレーターになるには」シリーズの本編に入ります。なお、毎回頭に「続・…」と付けるのはうるさいので、今回から「続」は省きます。

以前のエントリー ・イラストレーターになるには続・イラストレーターになるには – 序章「イラストレーターは職人であれ!」

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イラストレーターになりたければ「デッサン」をやるべし!

最初に結論を言うと、イラストレーターになりたければ「デッサン」をやるべきです。これに関しては、我ながらいつになく正論なので、ある程度イラストレーションに造詣がある人なら、全員同意してくれるのではないかと思います(むしろ反論があれば聞いてみたい)。

不思議なのは、その割にイラストレーター志望の人たちにとって、デッサンがイラストを描く上でそれほど重要な要素として認識されていないことです。実際、本やウェブにおいて、今回のエントリーのタイトルのように直接的に「イラストレーター志望者はデッサンをやれ!」という言葉を見ることはあまりありませんし、僕も当初はその重要性を認識していませんでした。

なお、僕は別段デッサンの専門家でもなければ、素晴らしいデッサン力を持っているわけでもありません。ただ、デッサンを学んで、デッサンの概念を理解したことによって表現の幅が格段に広がり、それがイラストレーターとして仕事をするために必要なスキルの中核になっていると確信しているので、今回はあくまで僕の主観を通して、デッサンの概要とその重要性を説明していきたい思います。

なぜ、デッサンが重要なのか

なぜデッサンが重要なのか。それは、デッサンが絵の「基本」だからです。

もちろん、良いイラストを描くためにはデッサンに限らずさまざまなスキルが必要です。たとえば、僕のようなデジタル・イラストレーターはIllustratorやPhotoshopのようなデジタルスキルを要しますし、絵の具をメインに使うアナログ・イラストレーターは、アナログ画材を使うスキルが必要ですが、その前提として必要な「絵の基礎」が、すなわち「デッサン力」なのです。

他の分野に例えるならば、英語を学ぶ上での「文法」や「単語力」であり、音楽を学ぶ上での「音楽理論」であり、スポーツにおいては「基礎体力」のようなものだということができます。

僕はいかにしてデッサンの重要性を知ったか

僕が最初にデッサンの重要性を気づいたのはイラストレーターを目指し始めた25歳頃のことで、最も尊敬するイラストレーターである大寺聡さんが雑誌のインタビュー記事等で「良い絵を描くためにはデッサン力が大事だ」とおっしゃっているのを読んだからです。そのあたりのことは、半生記(僕の半生 -10 | デザイナー・後編/イラストレーター・立志編| 2003年1月(26歳)〜2004年1月(27歳))に書きましたので、関心を持っていただけたら読んでください。

デッサンとはどのようなものか

しかし「なんとなく絵が好きでうまく描けるからイラストレーターになりたいな」と漠然と思っている人は、突然「デッサンをやれ」と言われても、そもそもデッサン自体がどのようなものなのかがピンとこないと思いますので、簡単に説明したいと思います。

立体物や空間を平面上に表現する技術

デッサンを説明する上で、もっとも重要な要素をひとことで言うと「立体物や空間を平面上に表現する技術」と言えます。当たり前ですが、絵とは平面表現であり、紙などの平面上に配置した線や色のバランスで、見る人に「あたかもそこに立体が存在するかのような錯覚」を与えることによって、情報を伝えるものです。

デッサンの基礎は立方体や球体や円柱などを鉛筆一本で紙に写実的に描き出すことですが、こういう訓練を通して我々は、実は世の中のほとんどのものは、たとえ一見複雑な形のものでも、シンプルな物体の集合体として構成されていることを知るわけです。

Dessin stillたとえば、人間の身体を単純化して解釈すると、球体(頭)と円柱(首・胴体・腕・足など)は球体や円柱の集合体と捉えることができます(かなりやっつけですが、こんな感じ↓)。

dessin_human

ということは、複雑な形の物体(人間や自動車など)を描くのが苦手な人も、デッサンを通してこれらの単純な立体を描けるようにさえなれば、理論上は(単純な立体の集合体を描けばいいだけなので)苦手分野が無くなるということなのです。

具体的な一例としては、急ぎの仕事でたくさん人間を描かなくてはいけないときに、デッサンを応用すればどんなポーズでも資料無しで描けるので、それだけでもかなり生産力が上がります。

面でとらえる

デッサンの特徴として、対象物の形状を「面」でとらえて描写することが挙げられます。これはどういうことかと言うと、たとえばマンガ的な表現を通して絵を覚えた人(僕がそうでした)は、無意識に「線」で物の形をとらえているのですが、立体を表現するのに、この「線」の認識は限界があるのです。本来、立体は「面」の集合体として構成されており、「線」は結果的な単なる輪郭に過ぎないからです。デッサンをする上では、立体を「面」で解釈し表現することが非常に重要で、その訓練を通して、イラストにおいても線に頼らない色彩のみでの表現がしやすくなります。

風景・背景が描けるようになる

イラストレーターで意外と多いのが、「人物イラストはうまいけど、背景は苦手」という人です。たしかにイラストの仕事は人物を描く案件が多いので、背景は苦手でもなんとかなるにはなりますが、背景まで描ける(あるいは、風景のみでも成立するイラストが描ける)イラストレーターは、それだけで強みになります。僕が10年間イラストレーターとして仕事をしてこれたのは、その点も大きいと思っています。

たとえば、数年前から、僕は小惑星のイラストをたくさん描いているのですが、それが思った以上に需要があり、「ぜひ惑星のイラストを当社の広告で使いたい」というような、言わば「惑星ご指名」のオーダーをよくいただくようになりました(惑星イラスト一覧はコチラ)。

ここまでの説明を踏まえて見ると、この小惑星も、まさに「球体と立方体や円柱の集合体」であり、デッサン力がいかに風景の描写に有効か、お分かりいただけると思います。

また、デッサンによって、景色を描くための遠近感の表現も学ぶことができます。たとえば、石膏像を描く時に、正面から見た石膏像の額より胸が手前に存在することを明確に表現するために必要な技術は、遠くの山頂より目の前の電柱が近くに存在することを描くのと全く同じ手法なのです。

色彩の基礎にも

デッサンは基本的に単色の世界ですが、色彩表現をする上でも全く無駄ではなく、むしろ色彩表現の基礎でもあります。これは、当初僕も理解できなかったので、大寺さんに「カラーのイラストを描く上でもデッサン力は大事でしょうか?」と質問したところ、「もちろんだよ。むしろ、鉛筆一本使って単色の濃淡だけで正確に立体を表現できてこそ、さらに複雑な色彩を使った表現が可能になるものだよ」と言われ、完全に納得したものです(ちなみに、大寺さんは若い頃に美大受験予備校のアトリエでデッサンの講師をしていた経験もある人です)。

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必要なデッサン力とは

では、どういった方法でどのようなデッサンを学ぶべきかを、僕の私見を交えて書きたいと思います。

イラストに有効なのは石膏デッサン

イラストレーターになりたい人が、必要なデッサン力を効率的に身につけられるのは「石膏デッサン」だと思います(あと、鉛筆か木炭か?だったら、鉛筆が良いと思います)。デッサンには大きく分けて「石膏デッサン」と「静物デッサン」があります(まあ、厳密には他にもいろいろありますが)。石膏デッサンは、その名の通り石膏像を描くデッサンで、静物デッサンは、静物、つまりたとえばコップや花瓶やトウモロコシや靴などを描くデッサンです。

なぜ、石膏デッサンの方が良いかというと、それはそれぞれが持つ特徴ゆえです。

石膏デッサンは、石膏像の立体形状を正確に把握して、それを正確に平面に描き出していくことが最優先されるものです。

それに対して、静物デッサンにおいては対象物の形状のみならず、それ自体が持つ表面材質の質感などの表現も重要な要素です。つまり。パンの表面の粉っぽさや、ぶどうのツヤや、ふきんのザラっとした感じなどを、鉛筆(あるいは木炭)でいかに表現するか?という技術も重要になってきます。

デッサンそのものとしては、どちらも同等に重要なのですが、最終的にイラストレーションに還元していくことを前提とした場合、静物デッサンのテクスチャ(表面の質感)表現は、(超リアルタッチの場合を除いて)イラストのタッチが優先されて意味をなさないケースが多いので、純粋に立体の描写を究める「石膏デッサン」の方がイラストレーター(志望者)向けだと思います。

どのレベルのデッサン力が必要か

では、どの程度のデッサン力が必要か?というと、これはもう本人が満足すれば、どのレベルでもいいのですが、あえて基準を設けるなら「そこそこの美大受験で合格できるレベル」くらいは必要なんだと思います。美大受験のデッサン試験はかなり厳しいのが現実ですが、考えてみれば、イラストレーターとはプロの絵描きなので、美大生くらいの画力(デッサン力)があって当然と言えば当然といえると思うのです。

どのように学ぶべきか

学び方も各々自分に合った方法でいいのですが、たぶん最も効率的な勉強法は、美大受験の予備校(アトリエ)に通って、美大志望の受験生と一緒にデッサンをすることだと思います(あるいは、もしかしたら、そういったアトリエで社会人向けのようなコースが設けられていたら、もちろんそういうのでもいいのですが)。前述の通り、美大に受かる程度のデッサン力を短期間に身につけるには、これが一番だと思います。

ちなみに僕の場合は美大受験のアトリエではありませんでしたが、運良く近所の絵画教室でデッサンを教わることができたので、そこに通って2年ほどデッサンを学びました。

美大やイラスト学校について

話は少しそれますが、僕がイラストレーターを志したころ、よく「美大も出てないのに無理だ」と言われたものでした。たいてい、そういうことを言う人に限って、イラストの業界のことを全く知らない門外漢で、学歴主義や権威主義に基づいて、そう言っているだけなので真に受けることはありませんでしたが、10年経ってますます確信しているのは、「イラストレーターになるために必要なのは、“美大に行くこと”ではなく、“美大に行ける程度のデッサン力”である」ということです。もちろん、その上で、いろいろな表現について専門的に学ぶために美大に行くことは決して無駄ではありませんが、それはあくまでオプションであり、必須ではありません。

イラストの専門学校やイラストレーター養成学校(のような学校…)に関しては、入学の際にデッサンの試験がないケースがほとんどなので、ますます「オプション的」と言えます。僕の経験則ですが、美大以外のイラスト学校のほとんどは、基礎としてのデッサン力を鍛えるカリキュラムではなく、イラストっぽい「タッチ」や「スタイル」にフォーカスしていることがほとんどですが、これは前述の「充分なデッサン力」がある上で学ぶならまだしも、デッサン力が足りない人がタッチやスタイルだけ学んでも、(少なくともプロのイラストレーターになる上では)あまり有効ではありません。

「イラストレーターになりたい」と思う人は、自然と学校名や学科名に「イラスト」と付く学校に行けば、イラストレーターになれる確率が高いのではないかと考えると思いますが、そのような理由で、そういった学校よりも美大受験のアトリエでデッサンを学ぶほうが効果的だし、イラストの学校に行くより安い場合が多いと思います。

そして、浮いた学費の差額で最新のMacでも買って、Adobe製品を使い倒して究めた方が、圧倒的にイラストレーターとして仕事ができる可能性は高いはずです。

この辺りの「学校論」については、また改めて書きたいと思いますが、もしイラストレーター志望の方で「こういうタイプのイラストレーターになりたいので、この学校行こうと思ってるけど、どうかな?」と悩んでる方がいたら、僕で良ければ(独断で)判断するので、遠慮なくご相談ください(→メール)。

まとめ

大寺さんでさえ「デッサンに終わりは無い」と言うほどデッサンは深いもので、僕のデッサン力などまだまだなので、本当はこんなことをえらそうに書く資格も無いのですが、特にイラストレーター志望の若い人に向けて、こういうことを明確に発信する必要があると以前から思っていたので、あえて今回は「イラストレーター(志望者)にとって、いかにデッサンが重要か」を、私見を交えて書いてみました。

デッサンの訓練は、非常にストイックなイメージがあり、イラストレーター志望者にはハードルが高いかもしれませんが、こういった基礎を固めてこそ、どんな仕事にも幅広く対応できるプロのイラストレーターになって、流行り廃りに影響されない息の長い活動ができるものだと思います。

最後に、僕がデッサンを勉強していたころによく読んで、非常に参考になった本を紹介しておきます。

 

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Comment

  1. 矢吹 より:

    はじめまして。
    私は趣味で漫画を描いている社会人です。
    キャラクター絵が好きなのですが、だんだん自分の下手さに辛くなってきました。
    そこで絵の練習をしたほうが良いと感じています。

    高田さまはデッサンを学ばれていたとの事ですが、石膏デッサンは、キャラクター絵、人物絵にも有効でしょうか。それとも人物は人物で訓練をされてましたか?
    また、2年間デッサンされたとの事ですが、どのくらいのペースで通われていましたか?

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