前回の『イラストレーターになるには①「イラストレーターになりたかったら、デッサンをやるべし!」』からずいぶん時間が経ってしまいましたが、近々「イラストレーターになるには」シリーズのつづきをまた書き始めたいと思います。ちなみに、第2回目は「デジタルをきわめろ!」になる予定。
「イラストレーターになるにはシリーズ」とは?
今後も、「イラストレーターになるには◯◯をやれ!」とか「◯◯であれ!」みたいな記事をシリーズ化して書いていくつもりで、総称して自分で勝手に「イラストレーターになるにはシリーズ」と呼んでいるわけですが、このエントリーでは、このシリーズについて説明というか「ことわり書き」的なものを書いておきたいと思います。
これは個人の主観です
まず、ご覧のとおりこれは僕の個人ブログで、誰かにお金をもらって書いているわけでも何でもないので、完全に僕の主観に基づいた意見を書きます(もっとも、お金をもらって執筆依頼を受けても同じような内容を書くと思いますが)。
この手の「自分の方法論のシェア」をすると、共感して参考にしてくれたり、「励みになった!」と言ってくれる人もいる一方で、「それって違うんじゃない?」的な否定的な反応もあるのですが、上記の通り、これは僕の個人ブログであって、僕が過去10年間フリーランスのイラストレーターとして活動してきた方法論のシェアなので、「違う」も何も無いわけです。
僕自身も、「僕の方法論が一番正しい」とか「この方法以外はうまくいかない」とは思いませんし、あくまで多数ある方法論のひとつとして参考になればと思ってシェアしているだけなので、共感できない人も多様性の一環として寛容に受け止めてほしいと思っています(多様性の欠如は日本社会の大きな課題ですし)。
改めてターゲットを定義してみる
まあ、タイトルをつけるにあたって目につきやすくするために「イラストレーターになるには」としており(別にツリではないけど)、そこで引っかかってムッとする人がいるのかもしれないので、改めてここで僕が読者層として想定しているターゲットを明らかにしておきたいと思います(もちろん、想定しているターゲットに該当しない人でも、興味があれば読んでいただき、大いに参考にしてほしいと思っていますが)。
前提として、僕のようなイラストレーターになりたい人
まず、前提として「僕のようなフリーランスイラストレーターになりたい人」が読むことを前提にしています。「そんな人いないでしょ…」と思った人は、そっとページを閉じてください(笑)。
この辺のことは「僕の半生」でも似たようなことを書きましたが、なにしろ長くて改めて読んでいただくわけにもいかないのでシンプルに説明しますと、僕のようなタイプのイラストレーターは、需要がある割には「なり方」の指南書が少なすぎるので供給者が少ないのが現実で、僕自身も駆け出しの頃は情報が少なくて困ったことが多かったので、独立して10年経った今、自分の経験をシェアしようと思うに至りました。
つまり、厳密にいえばこのシリーズは「高田ゲンキみたいなフリーランスイラストレーターになるには」なワケですが、そんなシリーズ名にはしたくないので、せめてもの但し書きとしてこのエントリーを書いています。
「僕のようなタイプのイラストレーター」とは
ちなみに、「僕のようなタイプのイラストレーター」を明文化すると下記のような条件になります。
・流行り廃りの無いタッチ
・アート系ではなく職人系
・デジタルに強い
・コメディ要素が強くない
・サブカルっぽくない
・萌え系とか絵師系でもない
・オシャレ要素も強くない(ファッション系とは相性が良くない)
・言われたものはだいたい何でも喜んで描く(エログロ以外)
・描くのが速い(1週間でカット100点とか余裕)
・カットもトビラも装画も描ける
・人物も背景も描ける
・最低限のデッサン力がある
・イラストマップも漫画も似顔絵も描ける
・ついでに文章もそれなりに描ける
・ビジネスパーソンとしての常識・能力がある
・コミュニケーション能力が高い(クライアントの意向を汲み取るのが得意)
※なお、上記条件に関して、「なぜ、この項目が長所になるのか?」とギモンがありましたら、コメントやメールでご質問ください。何らかの形でお答えします。
僕みたいなタイプのイラストがビジネスとして強いワケ
「イラストレーターは職人であれ」でも書きましたが、上記のような要素を集約していくと、幅広いメディアで使われやすいイラストになるので、その商品を前提に効率よくマーケティングをしていけばビジネスチャンスはかなり大きく、それがこのタイプのイラストの強みだと思っています。
実際、僕が今までに継続的に仕事をしている分野も幅広く、思いつく限りでも、IT・語学・教育・健康・ビジネス・金融・旅行(観光)・宗教(キリスト教)等多岐にわたっておりメディアの種類も出版・新聞・広告・Web等(今後はアプリ開発等に提供するイラストレーションも想定)と、幅広く対応しています。
一方で、ファッション性・流行りのタッチ・コメディなどの要素が強いイラストは、華やかだし当たればデカい反面、対応できる時代やメディアを狭めてしまうので、ビジネスとしてのリスクも同時に「デカい」と言えるのですが、どうしてもイラストレーター系の学校や雑誌は、話題性があってフィーチャーしやすいこともあってか、そういう華やか(?)なイラストレーターばかりを紹介するので、若手もそういう方面を目指す傾向が強くなり、結果として過当競争が起きている感が否めません。過当競争が起きている時点でビジネスとして旨味がないことに気づくべきですが、そもそも絵描きを目指す人間はビジネスにうといタイプが多いので気づきにくい…という悪循環のせいで、どうにもならない状況になっているのです。
職人派イラストレーターを目指す若者がもっと増えるべき
一方で、僕のような職人タイプのイラストレーターは、カバーできるシェアが広く、やり方次第ではまだまだビジネスとしての可能性があるのにも関わらず、そこを目指す若者が非常に少ないのが現状で、これはとてももったいないことだし、僕自身としてもこういう仕事が受け継がれていかないのではないか…という危機感があります(このブログを開設する動機のひとつは、この危機感でした)。
実際、ありがたいことに僕はしばしば受注が多すぎて捌ききれない状態になりますが(あ、でも新しいお仕事は常に大歓迎ですので、お気軽にご相談を!お問い合わせはコチラ)、そんな時に仕事を分散させるために紹介できる若手が、僕の知る限りではいません(もちろん、若手のイラストレーターで似ているタイプはいますが、一定のクオリティをクリアしている人は非常に少ない)。イラストレーターを目指す若者の人口はかなり多いのに(イラストレーター養成学校等は常にそれなりに生徒がいますし)、この現状がどうして起こっているかというと、それは上記のとおり「どのようにしたらなれるのか」という指南書が少なすぎる上に、僕らが携わる仕事が目につきにくく(BtoB的案件が多い等の理由で)、憧れの対象になりにくいからだと思うわけです。
たとえば、若い人がイラストレーターを目指そうと決意するにあたって、多くの場合は情報収集のために、まずイラストの業界誌を買うと思いますが、業界誌(知る限りでは2誌ほどしかありませんが)は、どれもアナログ画材を使ったアーティスト的志向の強いイラストレーターか、メディアで目につく一部の流行のイラストレーターばかりフィーチャーしてしまうので、イラストレーターを志望する若手からすると「こういう人たちを目指すべき」と思い込みやすい環境になってしまっています。もちろん、彼らのようなイラストレーターを目指すこと自体は悪くありませんが、それは多種多様なイラストレーターの業態の一例だということを知った上での話であって、それしか選択肢が無い状態は不健全な状態だと言わざるを得ません。
まあ、雑誌に関しては、業界における使命以前に媒体そのものの存続という死活問題があるので(実際かなり厳しいと思われる)、内容の改善に期待せず、問題を感じている人間各々が発信をするのが現実的な解決なのかもしれません(例えば僕はブログを書くとか)。
このブログの使命
というわけで、この「イラストレーターになるにはシリーズ」の使命はザックリ言って以下の2点になります。
- 僕のような職人系イラストレーターの仕事の周知
- それを志す人のための指南・啓蒙
逆に言うと、アート風・ファッション系・コメディ系のイラストレーターとして活躍したい人には役に立たない情報かもしれませんので(技術的な方法論は全ての人に共通して役立つと思いますが)、その点はご理解ください。もっとも、そういう人たちに有益な情報は業界誌などで得られるので問題無いわけですが。
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