僕はフリーランスとして日々多くのクライアント企業と取引をしていますが、その中で避けて通れないのが契約書の存在。
この契約書、お互いに損が無いように契約内容を取り決めて明文化するための超重要なものであり基本的にはとてもありがたいものですが、難点があります。それは…
めちゃくちゃ理解しにくいということ!
フリーランスに限らず多くの人から同じような声も聞くので、今回は僕が日頃から使っている契約書を一瞬で読みやすくする方法を紹介します!
契約書はなぜ分かりにくいのか
そもそも、なぜ契約書はこんなに分かりにくいのでしょうか?
僕なりに必死に検証してみたところ、そこにはふたつの大きな理由があることに気づきました。
- 契約書の本文に難解な単語が多い
- 「甲」「乙」の表記がややこしくて、読んでるうちに混乱する
そして、このふたつのうち1は仕方ない(というか、手の施しようがない)けど、2の「甲」「乙」の表記に関してはちょっとした工夫で大幅にわかりやすくできるという事に気づいたのです。
「文字置換」で契約書をわかりやすくしよう!
その方法とは…
WordやGoogleドキュメントの文字置換の機能を使って、「甲」を「クライアント名」に、そして「乙」を「自分の名前」にしてしまう
というものです。
契約書の中に必ず現れる「甲」「乙」「丙」などの表記。これ、法律上の義務なのかというと、調べてみたところ全くそんな事はなく、慣習として使用されている記号とのこと。
というわけで、さっそくこれらの表記をわかりやすくする方法を説明します!
① 契約書のファイルを用意する
まず、契約書のファイルを用意します。
ファイルはテキストが抽出(選択してコピー)することさえできれば何でも大丈夫です。先方からメール等でdoc形式等で送られてきた場合はそれを使用します。
受け取った契約書が紙の書類か、あるいはスキャンした画像データなどだった場合は、クライアントに作成時のdocファイルをメールで送ってもらうようにしましょう。この時代、手書きで契約書を書くことはほぼ無く、99%の契約書はMicrosoft Wordを使用して作られているはずなので、間違いなくデータはあるはずです。「内容をよく確認したいので、データで送っていただけますか」と言えば、たいていは快く送ってくれるはずです(僕はいつもそうしています)。
逆に、ちゃんと理由を伝えた上で丁重にお願いしても相手が渡したがらない場合は、「内容をよく確認されては困る理由」があるかもしれないので、徹底的に確認して自分側に不利な条件が盛り込まれていないか調べましょう!
② Googleドキュメント(あるいはWord)で文字置換をする
用意したファイルを開いたら、文字置換をしてます。手順を見ていきましょう。
用意したファイルをGoogleドキュメントかWordで開きます。
使うソフトがWordの場合は(ファイルがdoc.なら)そのまま開けばいいだけですが、Googleドキュメントを使用する場合はアップロードして読み込ませる必要があるので、こちらの記事を参考にして開いてください。
[検索と置換]を選択
Googleドライブで書類を開いたら、文字置換を行います。以下、手順を説明します。
「甲」を置換
⬆このようにして、「甲」をクライアント名に置き換えます。なお、ここで使用している契約書はダミーのもので、「クライアント株式会社」というのは便宜上の架空名です。
⬆このように本文中の「甲」が、全てクライアント名に置き換わりました。
⬆同様の手順で、今度は「乙」を自分の名前に置き換えます。
⬆こちらも全て置き換わりました。
以上です!
なぜ名前を置き換えると読みやすいのか?
さて、甲・乙をクライアント名と自分の名前に置き換えた状態で契約書を読んでみてください。思った以上に読みやすくなったことに気づくと思います。
なぜ、たったそれぞれの名前を置き換えるだけでこんなにも違うのでしょうか?
その理由は…
当事者意識を持って読めるようになるから
なんです。
当事者意識を持って契約書を理解するのが大事!
当事者意識を持って読むと実感を伴って読めるので、内容の重要性も自然に理解できるのです。例えば、サンプルで使用した契約書の第5条(権利の帰属)から引用すると…
本契約に基づいてクライアント株式会社が制作した成果物に関する著作権(著作権法27条及び28条に関する権利を含む)は、成果物の納品時からゲンキからクライアント株式会社に移転する。
ただし、ゲンキが本契約以前に制作していたイラストの著作権はこの限りではない。
…となります。これ、甲と乙だといまいちどっちがどっちだか分かりくくて読み飛ばしてしまったりしそうですけど、こうなった途端に
え!? このプロジェクトって著作権譲渡前提なのか! これはマズいぞ。しかも「ゲンキが本契約以前に制作していたイラストの著作権はこの限りではない」って当たり前すぎるだろう!!(怒)
…と、とたんに自分事として読めるようになります。
続く、著作者人格権に関する条項は
ゲンキは、クライアント株式会社及びクライアント株式会社が指定する第三者に対し、著作者人格権を行使しない。
…となりますが、これに関しても
なに!? 著作者人格権って本来著作者(つまり自分)が持っている権利なのに、それを行使するなということは事実上権利を持ってないことと一緒じゃないか! これはひどい!(怒)
と思えるのです。
⬆の契約書の「ゲンキ」のところをご自身の名前に置き換えて読んだら、お分かりいただけると思います。
で、こうして自分の名前にすることで当事者意識を持つことができ、それによって「ひどい!」とか、あるいは逆に「こんな良い契約内容を提示してくれて嬉しい!」みたいな感情を伴って契約書を読めるようになるのです!
「感情的に契約書を読める」って、よく考えたらそれだけでもすごいことだと思いませんか?
著作権と著作者人格権に関しては僕の本で詳しく書いているので、よかったらそちらを是非読んでくださいね。
契約内容を理解したら…
さて、こうして以前以上に契約内容をしっかり理解したら、その上でやることは2つです。
- 良い待遇に対して、クライアントに感謝を伝え、仕事を頑張る
- こちらが不利な条項に関しては、ハッキリと異議を伝え、修正を要求する
特に2が大事ですね。
契約書内容には異議を申し立てても良い
特に駆け出しフリーランスは「クライアントの契約書の内容に不満があっても飲むしかないのではないか」と思っている人が多いのですが、そんな事はありません。相手から送られてきた時点では、あくまでクライアント側の希望の条件を盛り込んでいるだけなので、原則として内容に対する異議申し立てをして、締結前に双方が納得できる内容に修正してもらう事が可能です。
逆に、署名捺印して締結した後では、それが不可能になる! 契約を交わす前に疑問点はどんどん聞いて、こちらに不利な点は修正してもらうように交渉しよう!!
僕の経験上、クライアントがまともな企業であれば、契約内容の修正には割と応じてくれますし、すべてこちらの希望通りにならないにしても真摯に耳を傾けてくれることがほとんどです。
逆に、こちらのそのような質問や要望に対して聞く耳を持たなかったり横柄な態度を取るクライアントの場合は注意しましょう。そういうところは下請け軽視で発注先を大事にしない場合が多いので、案件欲しさに妥協して契約してしまっても後々良い関係が築けずに、結局揉めたり決裂したりして無駄に時間や精神を消耗してしまう事になりかねないからです。
理解しやすくするために名前を置換した場合、署名・捺印する前には必ず元の「甲」「乙」に戻しましょう。法的義務ではないとは言え、こちらで勝手に名前を変えてしまった書類を提出してしまうと無効(→二度手間)になってしまうし、何よりクライアントからの信用も失いかねません。十分注意してください。
まとめ
以上、「読みにくい契約書を一瞬で読みやすくする裏ワザ」のご紹介でした!
契約書と言うと仰々しい印象ですしクライアントとの駆け引き的な印象も強いかもしれませんが、本来は双方が得するウィンウィンの条件を確認し、それが揺るがぬように明文化するための物なので、フリーランス側にとってもありがたいものです。
特にフリーランスとして活動する上で、この契約書の存在は避けて通れないので、きちんと理解できるように是非この方法を使ってみてくださいね🤓
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