突然ですが、今これを読んでいるあなたは、日本の美容師は世界的にその技術が認められており、海外移住する際に最も有利な職業のひとつであるという事を知っていましたか?今は多くの日本人美容師が世界で活躍していますが、今日はその先駆けとも言える一人の美容師の海外移住のストーリーをお届けしたいと思います。
お話を聞いたのは、美容師の齋藤達司さん。1998年に美容師としてドイツ移住し、今ではベルリンの人気美容室”LINK HAIR DESIGN“のオーナーとして活躍中です。
僕がLINKに通い始めたのは2013年の事でしたが、齋藤さんとは同い年ということもありすぐに打ち解けて色々な話をするようになりました。そして、ある日お店でカットをしてもらっている時に、こんな話になったんです。
(え?ノリ軽すぎない?)じゃあ、ドイツ語はどうやって習得したんですか? 日本で勉強してから来たとか?
いやいや! ドイツ語、最初は本当に全く出来なかったんですよ。なので、ドイツに来たばかりの頃は仕事が終わったら街の飲み屋に繰り出して、そこの酔っぱらいをつかまえては辞書を片手にビール飲みながら話し相手になってもらって…みたいな事をしてたら何とか話せるようになったんですよ
(え?その語学習得法、めちゃカッコよくない?)
そんなやり取りをして以来いだき続けてきた「海外を目指す日本の美容師さんたちのためにも、絶対にいつか齋藤さんにインタビューをしてシェアしたい」という願いがようやく実現しました。
では、どうぞ!
ドイツに来る前の話
三代にわたり美容師の家系に育つ
ゲンキ: やっとこうしてお話を聞くことができて嬉しいです。
早速色々伺いたいんですけど、齋藤さんはドイツに来られる前に日本でも既に美容師として仕事をされてたんですよね?
齋藤 : そうです。うち、実は代々美容師の家庭で、親父が三代目だったんですよ。ちなみに一代目に至っては満州事変とかそういう時代ですね。だから、「まあ自分も美容師になるもんなんだな…」って感じで育って、高校出て美容師学校行って…って感じでした。
ゲンキ: そうだったんですね。ちなみに出身はどちらでしたっけ?
齋藤 : 東京の目黒です。もう、周りはすごい金持ちばかりですごい環境でしたよ(笑)。
ゲンキ: で、美容師学校出てから、東京の美容院に美容師として就職して…って感じだったんですか?
齋藤 : いや、僕は高校行きながら通信で美容師の勉強して資格取ったんで、高校卒業と同時にすぐ就職して、そのまま6年くらいは東京で働いてました。
ゲンキ: (え、そんな方法もあるのか…!)
齋藤 : で、実はうちの親父もフランスに数年行って修行してた時代があったんで、僕自身も「いつかは自分もヨーロッパに行きたい!」という憧れがその頃から強かったんですよ。
ゲンキ: なるほど〜。なんか、すでに今まで僕が抱いていた齋藤さんのイメージとは違ったルーツが色々と知れて興味深いです。引き続き、聞かせて下さい。
ヨーロッパに来たきっかけ
ゲンキ: 海外に出たきっかけは何だったんですか?
齋藤 : その頃にね、パリでコンテストがあったんですよ。美容師の世界大会…みたいな。それに日本の代表として出ることができたんですね、日本の予選を勝ち抜いて…。
ゲンキ: すごいことですよね!?
齋藤 : まあすごいといえばすごいんだけど、それより何よりその大会で海外の美容師たちのレベルを目の当たりにして「やっぱ海外ってすごいんだな!」ってショックを受けて、「やっぱり、これは日本じゃなくて海外で経験積まないと…!」って改めて決意したんです。
ゲンキ: なるほど。で、パリに行ったんですか?
齋藤 : いや、それでヨーロッパで就職させてもらえる美容室を探したら、ドイツのフランクフルトにある日本人オーナーの美容室で雇ってもらえることになったので、フランクフルトに行ったんです。
ゲンキ: その時代にその行動力は、本当にすごい…。当時って、そういう事する人は今以上に少なかったはずですよね?
齋藤 : 全然いなかったですよ。僕が知る限り僕以外いなかった(笑) でも、だからこそやる価値があると思ったんですよね。皆と同じことやってても意味が無いっていうか。
で、フランクフルトに渡って、最初は数年修行して日本に帰ろうかな…ってくらいの気持ちだったんですけど、しばらくしたら気持ちが変わって、「やっぱりずっといたいな…」って思うようになって…。
ゲンキ: なぜですか?
齋藤 : 一番大きいのは、カジュアルな空気っていうのかな…。日本の美容師業界の上下関係っていうか、そういう体育会系みたいなノリがあるんですよ。で、日本にいた時はそれが当たり前だったから違和感ってほどではなかったんですけど、ドイツに来るとそういうの全く無いので、そこで「あれは実はかなりキツい環境だったんだな…」って気づいちゃって…
ゲンキ: もう戻れないな…と?(笑)
齋藤 : そう、まさに。もう先輩の弁当とか買いに行けないな…って思って(笑)
そんなこともあって帰らずに頑張って5年働き続けたら、定住許可(いわゆる永住権)ももらえたので、こうなったらずっとドイツにいよう!って思って。
あと、いずれはどこかしらで自分の店を出したいな…っていうのは若い頃から考えていたんだけど、「ドイツに日本人の美容室を出すっていうのは自分にしかできないんじゃないか?」って気づいて、せっかくならそうしよう!って思ったんです。ドイツで自分の店を持つことを考え始めたのはその頃からですね。
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