ベルリンに一目惚れした
ゲンキ: 出店する場所としてベルリンを選んだ理由は?
齋藤 : ハンブルクとかミュンヘンとかの他の街もいろいろ見たんですけど、いまいちピンとこなくて。で、2007年の7月頃にベルリンに来た時にビビッとハマる感じがしたんですよ。フィーリング的に「ここだ!」みたいな…。
ゲンキ: やっぱりフィーリングなんですね。でも僕も来たことも無いのにベルリンにいきなり移住して住んでみたらビビッと来たので、その感じは分かる気がします。
でも、僕が移住したのは2012年の終わり頃。齋藤さんご夫妻がベルリンに来たのはもっと前だから、ベルリンの雰囲気もずいぶん違ったはずですよね?(注:ベルリンはものすごいスピードで変化しているので、10年前と今とでは雰囲気も景色もかなり違う)
齋藤 : うん、かなり違いましたね。今でもベルリンはユルいと言われるけど当時は比べ物にならないほどユルくて何でもありで、区役所に行って担当者に「美容院を開店したいんだけど、建物の条件(火災法とか)は何をクリアすれば良いんですか?」って聞いたら「入り口があれば良いよ」って言われましたから(笑)。あまりにも適当だから、思わずその担当者の名前をメモしましたよ(笑)
あと、今と違うのは物価ですね。当時はまだまだ全然安かったし競争率も低かったから、いい物件が安く借りられた。これはかなり大きかったですね。
それで、この場所を契約して、…と言ってもドイツっていろいろ手続きに時間がかかるので契約にも半年くらいかかったりして、その間に店の内装を少しずつ進めて、結局2008年の12月にこの店をオープンしたんですよ。
開店直後のLINK
ゲンキ: オープンした直後ってどんな感じでしたか?
齋藤 : いや〜、最初は全然でしたよ。お客さんは来なくて…。ドイツ人の美容師の子を雇っていたので、その子についていたお客さんはうちに来てくれたけど、それ以外は全然…。なので、オープンしてから2〜3年は赤字でしたね。
もうね、朝お店に来て電気つけて、夜まで一人で過ごして電気消して家に帰るだけ…なんて日もザラでしたから。お前は管理人さんか?って自分で突っ込んでましたよ(笑)
あまりにも電話が鳴らないから「電話壊れてるんじゃない?」とか言って、点検のために妻に電話鳴らしてもらったりね。もう、そんな毎日でしたよ。
ゲンキ: そこからお客さんが来るようになったきっかけって、何だったんですか?
齋藤 : 口コミでしたね。当時はSNSが一般的じゃなくて、ネット掲示板がドイツに住んでいる日本人同士の情報交換、お客さんの一人が心配してくれて、その掲示板にお店の紹介を書き込んでくれたんです。最初のきっかけはそれでしたね。
それで知って来てくれたお客さんたちが気に入ってくれて友人知人にも紹介してくださって…という感じで、そこからは口コミでどんどんお客さんが来てくれるようになったんです。
ドイツ語の習得について
ゲンキ: あと、ドイツ語の習得法についてお聞きしたくて。
なんか以前も聞いたんですけど、ドイツに来て間もない頃、フランクフルトの日系美容室で働かれている時期に、仕事のあと夜な夜な街の酒場に繰り出して、そこでドイツ人のお客さんたちに話しかけて習得したとか。
齋藤 : そうですそうです。スペイン人のマスターが経営する本当に小さな立ち飲み屋みたいな店だったんだけど、そこに毎日のように辞書を持参して(当時はスマホも無かったので)、ビール一杯オーダーして、お店で仲良くなった人と頑張ってドイツ語で話をして、わからない単語を辞書で調べたり、会話中に「今なんて言ったの?」って聞いて教えてもらったり。そんな感じでだんだん話せるようになったんです。これは自分でも「頑張ったな!」って思いますよ。
今思うと、これが出来たのって日本の労働環境と違って、残業なしでキッチリ毎晩帰れるので、勉強がしたければその時間もしっかり取れたっていうのが大きいですよね。あとは、場所が酒場だから、酔った勢いで勇気を出して色んな人に話しかけられたのも大きい(笑)
ゲンキ: それにしてもスゴいですよね〜!
で、もちろん今はペラペラですもんね?
齋藤 : まあそうですね…。おかげさまで生活や仕事に困らない程度には話せてます。
ゲンキ: いや、実は以前そのお話を聞いて、「これは理想の語学習得術じゃないか!?」って感動して、僕も真似しようと思ったんですけど挫折しまして(笑)。いろいろ条件が違うとは言え、本当にスゴいな…って改めて思ったんですよ。
齋藤 : いやいやいや…(照)
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