ベルリンからこんにちは。高田ゲンキ( genki119)です。
ベルリンと言えば音楽の街ですが、多様性にあふれるこの街は様々な音楽であふれていて、エリアによっても親しまれる音楽が異なります。大雑把に言えば、旧西ベルリンを代表する音楽と言えばクラシック(世界一とも言われるベルリン・フィルハーモニーの本拠地)であるのに対して、旧東ベルリンは世界的に有名なクラブ、Berghain/ Panorama Bar(ベルクハイン/パノラマ・バー)に代表されるクラブミュージックの聖地です。ベルリンを愛してやまない僕ですが、実は僕はどちらの音楽もそれほど強い関心が無く、どちらかと言うとJazzやRockを好んで聴くのですが、先日久しぶりにベルリンフィルに行く機会に恵まれたので、めずらしくクラシックに関してのレポを書いてみます。
ひさしぶりにベルリンフィルへ
きっかけは、友人の知人が「購入したけど行けなくなってしまったベルリンフィルのチケット(なかなか良い席!)があるので、誰か行きたい人いないかな?」と探していて、僕の妻がクラシック好きなので喜んで譲り受けることに。
外部リンク:Concert with Late romantic raptures | Berliner Philharmoniker
そして、僕はクラシック自体はそこまで好んで聴きませんが、せっかくの機会だし、何よりベルリン・フィルハーモニーの建築自体は非常に好きなので、一緒に行って当日券を安く買えたら一緒に聴こうかな…くらいの軽い気持ちでついて行くことにしました。
18時20分ごろ、ベルリン・フィルハーモニー前に到着。ベルリンも秋めいてきて、ずいぶん日が短くなりました。入り口付近にはダフ屋みたいな人がちらほらいたけど、とりあえず中に入って窓口で「当日の安いチケットは残っていますか?」と聞いたところ、最安の33ユーロのチケットを買えました!
上がいただいたチケット(104ユーロ!)で、下が僕がゲットしたチケット(33ユーロ)。「Block(ブロック) = Sonderpl.(ゾンダープラッツ)」と書いてありますが、これは「臨時席」みたいな意味です。どんな席なのかな…。
開演まではホワイエで乾杯!
無事にチケットも取れたので、開演までホワイエで飲み物を楽しみます。僕らはアルコールを飲まないので、二人でレモネードで乾杯。このホワイエもそうですが、ベルリンフィルの建築は全体にミッドセンチュリー調で、歩き回るだけでも本当に楽しめます。
お気に入りのステンドグラス。妙に懐かしい気持ちになります。
迷宮のような構造の階段をのぼって行くと、窓からきれいな夕焼けが見えました。
そして開演
開演時間になったので席に移動。僕のチケットの「特別席」からは、ステージがこんな感じに見えました! 音響のことを考えるとステージの正面が良いわけですが、高い場所が好きな僕としてはこれ以上無い特等席! ちなみに妻が座っていたのはステージ正面のかなり良い席でした。
この日の曲目
オペラ「ノートルダム」より 間奏曲(フランツ・シュミット)
指揮:Zubin Mehta
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調(エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト)
指揮:Zubin Mehta / バイオリン:Gil Shaham
交響曲第3番(サン=サーンス)
指揮:Zubin Mehta / オルガン:Thierry Escaich
特にヴァイオリン協奏曲 ニ長調が良かった
どの曲も素晴らしい演奏でしたが、特に印象的だったのがバイオリニスト Gil Shaham(ギル・シャハム)をソリストに迎えたヴァイオリン協奏曲 ニ長調。曲調もクラシックにしては現代風で転調を多用したスリリングなものなのでたのしめましたし、なにより素晴らしかったのはギル・シャハムの超技巧演奏で、聴き取れないほど速いフレーズでも音の粒が美しく、またすべての音域においてエッジの利いているのに、同時に柔らかさや温もりも感じる出音に感動しました。
クラシックファンではない人がクラシックコンサートを楽しむコツ
そんなわけで、全体を通して非常に楽しめたコンサートでした。
曲目や奏者ももちろん良かったのですが、やはりなんと言っても“非クラシックファン”の僕がコンサートを楽しめたのは、ひとえにベルリンフィルのホールそのもののおかげでもあります。建築としても非常に素晴らしいし、それだけでなく、このホールの設計自体が“ひとつの楽器”として機能している点が圧倒的に魅力的なのです。
クラシック音楽の素晴らしい点は建築そのものがひとつの楽器として機能すること
おそらく教会音楽に端を発するクラシック音楽は、楽器単体で完結する音楽と言うより、“建築そのものをひとつの楽器として機能させる音楽”で、観客は旋律とか奏者や指揮者それぞれの表現力もさることながら、アンサンブルがどれだけ建築(ホール)と共鳴してひとつの楽器として機能させているか、という点にフォーカスして楽しむべきだと思っています。特にベルリンフィルのようなオーケストラのために建てられた建築は、舞台から発せられた音がホール全体に行き渡らせるように設計されているのでことさらです。
特にパイプオルガンはおもしろい
そして、その点において特におもしろいのがパイプオルガンです。パイプオルガンはホールの一部に設置された巨大なパイプを鳴らして、ホール全体(教会の場合は会堂全体)に音を響かせる楽器です。今回のコンサートでも3曲目の交響曲第3番はパイプオルガン入りの編成で、僕の座っていた臨時席のすぐ横に設置されたパイプがホール全体を鳴らし、その音の振動と繊細なオーケストラの弦楽器たちの音によって作られたアンサンブルは何とも壮大で感動的でした。
そんなことに着目してみると、曲調や楽器編成が好みでなくても、別の視点から楽しむことができると思います。
まとめ
ベルリンは本当に文化度が高い街で、特にクラシックを楽しむにはこれ以上ない環境なので、食わず嫌いをせずに今後もなるべく足を運んで触れてみたいと思います。
ちなみに、前回観たベルリンフィルのコンサートは、Sir Simon Rattle(サイモン・ラトル)指揮ベルリン・フィル&ピーター・セラーズ演出の『ヨハネ受難曲』でした。
とりわけラトルの指揮は素晴らしかったのですが、僕自身は演劇的要素の強い受難曲よりも今回のようなオーケストラの演奏の方が楽しめるので、次回観るとしたら“ラトル指揮のオーケストラ”にしたいと思っています(何回か観に行くと、こうして自分の好みが分かってくるのが面白いですね)。
そんなわけで、久しぶりに楽しんだクラシックコンサートのレポでした。
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